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乳房は一人の女性の中で、はじめは無かったものが次第に隆起し、乳房を形成し、出産に伴い巨大化し、その後程度の差こそあれ縮小し、下垂する、とても移ろいやすい身体の一部です。そのうえ、乳房の大きさは甚だしく個人差があるわけですから、それぞれの時期や年齢で個々に望む大きさや形も全く個別の問題になります。
このような乳房に対する美容外科手術では、あなたの希望に応じて小さいと思われれば増大手術が、巨大であると思われれば縮小手術が、下垂していると思われれば挙上手術が計画されます。このような一般的な問題の他に左右の非対称、陥没乳頭など乳房に対する美容外科には色々なものがあり、そのひとつに乳ガン術後の乳房の再建が含まれています。
この乳房の美容外科で気をつけなければならないことは、乳房というものが思いのほか体にとって大きな組織だということです。従って目に見えるほど乳房を増大したり、あるいは縮小した乳房を大きく張りをもたせる場合、そこに移植されるべき組織はかなり大きなものになり、ご自身の組織を用いて増大を計画することは不可能に近い現実があります。
このような時に何らかの異物を乳房に注入するか、あるいは、可能な限り安全な物質を袋に詰めて乳房の乳腺組織の下に置き、乳房を大きくできればそれにこしたことはないことになります。
| ●異物注入法の欠点 |
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歴史的に眺めてみれば昭和30年頃に、オルガノーゲンやシリコンといった物質が乳房に盛んに注入されたことがありましたが、これらの結果は悲惨で、これらの物質が安全でないことは証明されています。そして最近にはこれ以外の物質、例えばハイドロジェルの注入などが国によっては行われていることもあるように聞き及びますが、これらの物質の注入が安全だと言う証明は今のところありません。 |
| ●脂肪注入による乳房増大術の欠点 |
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そこでおそらく誰でも気がつくのがこの脂肪の注入法なのではないでしょうか。お腹やお尻にいかにも余っている脂肪を吸引し、それを乳房に注入すればよいという考え方です。しかしながらここには重大な欠点があります。確かに注入された脂肪は自己の組織で他の異物注入法とは異なった良さはあるのですが、注入された脂肪は吸収されやすく効果が少なく、そして、大量に注入すると嚢腫や感染の危険性もあります。また、注入された脂肪の周囲には石灰沈着という状況がみられることが普通です。この石灰化もしくは石灰の沈着といった状況は脂肪注入によってもたらされた石灰化と、乳ガンによる石灰化をレントゲン線上で見分ける方法は現在のところありません。従って将来的に乳ガン検診の折りにこの石灰化が見付かり、これを切り取って病理的に調べると言うことが繰り返し行われる可能性があります。そしていずれとも分からない部位から本当のガンが発生し、手遅れになれば命に関わる問題となるでしょう。したがって現在まで注入法で安全に乳房を増大させる手法は開発されていません。 |
| ●プロテーゼによる乳房増大術 |
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もう一方の袋に詰めて異物を乳房下に挿入するという方法は、シリコンバッグプロテーゼ法と言われています。この方法にもリスクが無いわけではありませんが、注入法に比べればはるかに安全度の高い手術となります。このシリコンバッグプロテーゼによる乳房増大術はアメリカなどの事例をみると、1963年から1992年までの間に100万を越える手術が施行され、現在も年間20万件を越える件数が施行されている手術であることがわかります。このシリコン製の袋に入ったインプラントに関しても1992年にFDAが乳房増大術への使用を禁止するに近い措置を取った経緯があり、そのことを考えてみても諸手を上げて推薦できる方法だと言うことはできないと思います。ただ、この時の理由としてあがった人間の結合組織の病気をシリコンが引き起こすと言う考え方は現在では否定的になり、またシリコン製のプロテーゼが乳ガンの原因になると言う考え方も否定される方向になってきています。そして事実、少なくともFDAレベルにおいても生理食塩水の入ったシリコンプロテーゼの乳房増大術への適用は認められるに至りました。(このことをもっと細かく知りたい方は
http://www4.nas.edu/IOM/IOMHome.nsf/Pages/Recently+Released+Reports
このようにかなり問題のある事象ではあるにしろ、この手術に対する要望はかなり根強く強いものがあり、かつヨーロッパ等では広く現在でもシリコンジェルを用いたシリコンプロテーゼが広く乳房増大術に用いられています。 |
| ●乳房用プロテーゼについて |
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ここで乳房用プロテーゼと言うものについてお話しすれば、その構造自体はゴムの氷嚢といったものに相当しています。氷嚢ではゴムの袋の中に氷水を入れて頭に冷やすものなどに使いますが、乳房のプロテーゼはシリコンによって作られた袋の中に生理食塩水、またはシリコンジェルを封入し、乳房で必要なほぼ半球形の形状をしたものです。実際の触感もかなり乳房に近いものです。手術に際しては、このプロテーゼを乳腺組織の直下、もしくは大胸筋の下に作られたポケットの中に挿入することによって乳房の増大を計ろうと言うものです。シリコンバッグプロテーゼはかなりしっかりしたシリコンの膜に囲まれているため、他の如何なる乳房増大術に比較し、この方法は安全で具体的な方法だと言うことができます。ただしあくまでもかなり巨大な異物を使う手術ですから、それに伴うリスクや合併症などあらかじめよく承知の上、手術を受けていただくことが大切です。この場合これらのことに関しよく研究している形成外科に精通した我々の会員から手術の説明をよく受け、手術や合併症ならびにその対処法などにつき詳しく尋ね、よく理解されてから手術を受けてください。
あなたが少なくとも決定しなければならないテーマを列挙すれば、プロテーゼの形がナチュラルタイプと呼ばれるティアドロップ型をしているものか、半球形のものか、その表面はツルツルしているのか、ギザギザしているのか、シリコンジェルの入ったシリコンバッグプロテーゼなのか、生理食塩水の入ったシリコンバッグプロテーゼなのか、それらの利点欠点、さらには挿入される場所が乳房下なのか、筋肉下なのか、いずれの切開線からそれが挿入されるのか、等々です。これらにつき術者の好みや経験などを加味しながら、詳しく説明して下さる先生から手術を受けることをお薦めします。
現在シリコン自体は広く医学の世界で人工関節と人工の心臓弁としても利用されているものです。
いろいろな問題をかかえている乳房増大術ですが、現実には世界中で毎年何十万という方がこの手術を受け、満足されている方も多い手術です。 |
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