顔の輪郭形成術

顔の土台となるのは頭蓋骨、上顎骨、頬骨、下顎骨、鼻骨といった骨です。これらの骨が微妙に長かったり、短かったり、大きかったり、突出していたり、位置関係が狂っていたりすると顔のバランスがおかしくなってきます。このようなことは何らかの病気や外傷によっても生じますが、正常かそれに近い状態でも目立つことがあったりします。このような状態を修正しより良い状態に修正していく方法が顔面骨の美容外科あるいは顔面輪郭形成術(Facial Contouring)と呼ばれています。このような手術の対象となるのは、前額部、側頭部の変形頬骨の出っ張り、出っ歯(骨性)、下顎角部のエラ張り、小さ過ぎる頤といった局所的な問題から、長過ぎる顔、広過ぎる顎の幅、顔面の非対称といった顔面全般に及ぶものも含まれます。このような手術では直接計測したりできない顔面の土台となる骨を規格レントゲン写真(セファログラム)を用いて計測し、正常値(標準値)を参考にしながらあなたの希望を達成するのに最も良い手術方法を考えていくことになります。このような手術の中には、噛み合わせに関係する手術も含まれていることがあります。このような場合には歯科的矯正術をあわせ用いながら行っていくことになります。この顔面骨の美容外科手術は、個々に適用される手術や、これら手術の組み合わせはまさに個別的なもので、形成外科の中でも特に頭蓋顔面骨外科(Craniofacial Surgery)を通じて得られる正常に対する正しい理解のもとに、より美的センスを持って施行される必要があります。

●この手術はどういう方に適しているのでしょう?
「何か自分の顔が気に入らない」「出っ歯でつい口元を手で隠してしまう」「顎が小さいのではないか?」「エラが張っているのではないか?」「歯科的矯正だけでは充分な改善が得られていない、または得られそうにない」「鼻や頤に異物の挿入・増大術を行ったがどうも顔が大きく感じる」といった方々のための手術です。夢のようなお話ではなくあなたの本当の気持ちをお話下さい。そうすれば担当医も現実に即して手術の方法やとるべき手段についてご説明できると思います。きっと良い方法を現実に即して提案できると思います。

●どんな手術があるのでしょう?
顔面骨の美容外科というカテゴリ−の中には沢山の骨切り手術があります。列記すれば、上顎骨分節骨切り術、下顎骨分節骨切り術、頤部平行離断術、オトガイ部前進術、エラ張りの矯正手術、頬骨外面骨削骨手術、頬骨体骨切り手術、前額部修正手術、Le-Fort I型骨切り術、下顎矢状分割骨切り術 等々です。これらの手術は単独に、あるいはそのいくつかが組み合わされてあなたの希望にそって作られた計画書によって施行されていきます。これらの骨切り術のほとんどは口内法と言って、口の中から手術することが可能です。最近ではこれらの方法に加え、骨延長術を用いての顔面骨の美容外科も導入されてきており、手術の選択の幅は大変広いものとなっています。これらの手術計画をたてるにあたっては単にその局所の形態を見るだけでなく、顔全体を一つのものとして考え、頭蓋骨基底面からの位置や角度、距離などから、頤の位置を側貌上で割り出し、正貌上では、同じく頭蓋基底面の中央の真下に頤がくるといった全体のバランスの中から顔面骨を構成する部位を、必要な部位で骨切りし、あるいは骨を削り、あるいは骨を増大させながら、希望する顔面の土台を作り出そうとする手術です。また、歯そのものについてもその崩出角度や上顎骨の占める位置を頭蓋骨基底面から計測することにより、例えば出っ歯と言われる状態に対してもそれが上顎骨の位置に由来したものなのか、歯だけに由来したものか等を見分けながら上下顎骨分節骨切り術などが施行されていくことになります。他の部分も同様の考え方の中から顔面骨全体のバランスの中で手術の適用が探されていくとお考え下さい。

●麻酔の選択
このような顔面骨に対する手術で、ほとんどのものは全身麻酔下で行われるとお考え下さい。したがいまして、手術を受けるためには麻酔のための諸々の検査もあわせてお受けいただくことになります。

●手術の不確実性とリスク
全ての手術は何らかの不確実性とリスクを持っていますが、この顔面骨の美容外科を形成外科の中でも頭蓋顔面外科に精通した者が行った場合には、その合併症の発生頻度は大変低いものになります。しかし、常に感染や出血などを100%予防することは如何に経験のある術者でも完全に防ぐことはできません。従いまして慎重な術前計画の立て方と、術前後には医師の指導に正しく従って下さるようお願い申し上げます。

●回復までの期間
顔面骨に対する手術はかなり長期の入院が必要だと想像されるかも知れませんが、これらの手術の多くは通常生活に復帰するのに何カ月もかかるということは稀です。もちろん中には大変大きな手術がありますので、この場合には2週間以上の入院をお願いすることがありますが、多くの例は2週間程度で本来の生活に復帰していきます。その場合入院期間は3日から5日ほどと思って頂ければよいかと思います。術後の腫れにつきましては、上下の分節骨切り術のように一見巨大に見える手術ではありますが、この術後は比較的平易に回復するものであることがわかっております。かわりに下顎角部のエラや頬骨の突起を削るような手術におきましては予想外の腫れが残ることがあります。これは骨の表面を削るという形で手術が行われた場合に、その創面からの出血をなかなかコントロールする方法がないために生ずるものです。また、咬合に関わる手術が行われた場合には、あらかじめご相談した方法や手段によって手術前後に歯科的矯正が必要になります。


よくある質問

●上下顎骨分節骨切り術って何ですか?
上下顎骨分節骨切り術とは、上顎と下顎の4番あるいは5番の歯を抜歯し、その部分の歯槽骨および上顎骨、下顎骨を切除し、前歯の部分をその空間を利用して後方に下げる手術手技のことです。抜歯される歯につきましてはそこにある変形量や実際にある歯の状態などを考慮しながら、矯正医と相談し最も適切なものが抜歯されることになります。一見この方法は上下顎を抜歯し歯科矯正術のみによりこの空間に前歯を倒しこむ方法とよく似ているように見えますが、二つの方法で得られる結果に全くの差があります。抜歯して歯科矯正のみで歯を舌側に傾斜させていくことは場合によりますと、正常な顔面骨に対する歯牙の崩出角を失うことを意味しています。分節骨切り術では上顎骨・下顎骨の最前部が骨切りにより後方に移動することによって、抜歯によってでき上がった空間を埋めていくことになりますが、原則的に歯牙の顔面骨に対する崩出角の変化は生じないことになります。例えば、歯牙が異常に傾斜して生えている反っ歯状態の方が頭蓋骨の反っ歯状態を矯正するために、歯科矯正を行うことはおそらく崩出角の矯正につながると考えられますし、もし、上下顎骨の空間的な位置関係が頭蓋顔面骨全体として良い位置であるならば、この方法で充分だということになりますし、分節骨切り術の適用はありません。分節骨切り術はあくまでも頭蓋全体に対する上下顎骨の位置関係が前方にあることを意味している時に用いられる手法ということになります。この話は少し面倒臭いお話かも知れませんが、このような細かい点に価値を求められる方がこの手術の適用患者だと思っています。

●エラ取りってどうやってやるのですか?
現在ではほぼ口腔内から手術が行われます。奥歯のあたりの粘膜を切開しそこから下顎角部に到達します。本当にエラが飛び出しているようになっている方も時に見られ、これらの場合にはそのエラのみの切除を行うこともありますが、多くの場合下顎角部の厚みを減らしたり、あるいは、下顎そのものを切除しながらエラ張りを矯正していくこともあります。人間の顎は下顎枝と呼ばれる部分と、下顎体と呼ばれる部分で下顎角を形成しています。そして下顎体は頭蓋骨基底面に対し、女性であればおおよそ35度、男性でも30度程度のところに角度をもっているのが普通です。これがいわゆる顎のラインと呼ばれるものです。勿論この角度が大きくなれば顔は細長く見えるでしょうし、この角度が小さく20度程度になるとかなり四角い顔に見えるはずです。ただ、いずれにしても下顎角は人間の顔を構成する重要なランドマークの一つになっていますから、これを完全に消失させるような手術を計画したり、希望したりすることはあまり現実的ではないかも知れません。多くの方々が下顎角部のみならず、下顎枝から下顎体にかけての下顎周辺の外板を切除することで顔がほっそり見えるようになりますので、この手術を選ばれる方が現在では多くなっています。

●頬骨の出っ張りに対する手術はどうやってやるのですか?
今ではこのほとんどの手術は口腔内から行われることの方が多くなってまいりました。それは内視鏡などを併用することにより、口腔内からでもかなり深い部分にある頬骨に対しても手術を行うことができるようになってきたことがひとつの理由です。用いられる手術法としては非常に軽度な突出に対しては、骨の表面を削り取っていく方法を選択します。非常に高度な突出の場合には頬骨骨体そのものを骨切りし小さくする手術法を選択します。さらにこの2つの方法を組み合わせることもあります。ごく稀に大変に頬骨が発達していて、口腔内では手術しきれない場合がありこのような場合には耳前部から側頭部にかけての切開、あるいは睫毛下縁、もしくは下眼瞼粘膜の切開を併用して行われる場合がありますが、これはかなり稀な例と言ってよいと思います。


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