第3回全国美容医療実態調査 最終報告書(公表版)
(注意:本報告書の内容の転載・掲載の一切を禁じます。内容の利用についてはJSAPS調査委員会の許諾を必要とします。)

2020年6月22日
JSAPS調査委員会
事務局(春恒社内)
survey@jsaps.org
TEL:03-5291-6231
FAX:03-5291-2176

1.調査概要

日本美容外科学会(JSAPS)では調査委員会を立ち上げ、日本美容外科学会(JSAS)、日本美容皮膚科学会(JSAD)の協力を得て、国内の美容医療実態調査(実施数調査を意味する)を行った。
第1回調査では2017年分の施術数調査を行い、2019年2月に最終報告を行った。第2回の調査では、2018年分の施術数調査を行い、2019年10月に最終報告を行った。第3回の本調査では、2019年1月1日から12月31日までに行われた美容医療の施術数(症例数ではない)を、治療種目別および男女別に調査した。1症例に2種類以上の施術を同時に行った場合や、2019年中に複数回の治療を行った場合には、それぞれを個別にカウントした。

調査委員・アドバイザー(50音順):岩波正陽、加藤晴之輔、佐藤英明、杉本 庸、高田章好、高柳 進、矢永博子、山下理絵、吉村浩太郎(委員長)
調査協力:日本美容外科学会(JSAS)、日本美容皮膚科学会(JSAD)、日本形成外科学会(JSPRS)、日本皮膚科学会(JSD)
調査集計および分析:今回の実態調査においては、広島大学大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学および広島大学 疫学&データ解析新領域プロジェクト研究センター(田中純子教授)において、集計および解析いただきましたデータを使用させていただいております。調査委員会より、ここに深く感謝の意を表させていただきます。


2.調査目的

本調査は、美容医療実態の透明化を進めることを通して、社会からの理解と信頼を深めることを目的とした。結果的には、我が国における美容医療全体の発展、ならびに美容医療の質の向上に寄与することが期待される。ISAPS が行う国際的実態調査に、日本の実態調査分を提出して貢献することも、あわせて目的とした。


3.調査対象

JSAPS、JSAS、JSAD の会員医療施設すべて、および前記3 学会の非会員であるが美容外科もしくは美容皮膚科を標榜している医療施設をリストアップして、そのすべてを調査対象とした。さらに、今回は、日本形成外科学会および日本皮膚科学会の研修プログラム基幹施設(それぞれ88施設、105施設)も調査対象とした。総数は、3,093施設であった。


4.調査依頼、回収方法

調査回答の回収は、2020年2月および3月に行い、4 月以降に回答のあった一部医療機関の回答も併せて集計した。


5.調査項目

国際美容外科学会(ISAPS)が毎年実施している美容医療調査項目を土台に、日本の実態をより反映できるようにJSAPS調査委員会でアジア人に特徴的な細目などを追加した調査用紙(72施術種別)を使用した。第2回の外科的施術に含まれる注射治療などを、非外科的手術に組み入れるなどの、変更を行った。
施術ごと、および性別ごとの集計結果は、JSAPS版を作成するとともに、ISAPS版も作成し、ISAPSに日本のデータとして提出した。またISAPSの昨年の全世界統計データとの比較検討も行った。


6.調査結果

1)回答の集計(資料1)

調査回答423院分の各施術項目別の合計を資料1に示す。2018年全美容施術数回収分の合計は、1,976,266 件(昨年は1,707,363 件)であった。その中で、外科的手術259,562 件(13.1%)(昨年は234,595 件、13.7%)の内訳は、顔面・頭部が232,521(昨年207,826)件、乳房が7,832(昨年7,959)件、四肢・躯幹が19,209(昨年18,810)件であった。昨年の報告書と異なり、今回の報告から2018年、2019年についてはより厳密な外科、非外科の区別として、いくつかの施術を非外科施術として取り扱うことにしたため(ヒアルロン酸注射豊胸や非外科的腋臭症治療などは非外科扱いとした)、2017年との比較には注意を要する(資料1の項目としてに明示されているので参照していただきたい)。


回答内容の分析

①手術と非手術治療について

手術総数259,562 件に対して、非手術は1,716,704 件であり、手術が13.7%、非手術が86.9%であった。従来よりわが国では他の国に比べて、手術の割合が小さい特徴がある。また昨年に比しても、相対的に非手術の割合がわずかに増加している(0.6%分)。

②男女比について

性別にみると、1,975,632 件中、男性246,535 件(12.5%)、女性1,718,527 件(87.0%)であった。男性では外科的手技8.2%、非外科的手技91.7%であったが、女性ではそれぞれ13.7%86.3%であり、男性は女性よりも非手術を選ぶ傾向が強い。

③昨年との比較

回答医療機関が全く同じではないので正確には言えないが、全体の施術数は増加している。特に、非手術治療の施術数の増加が顕著である。

外科治療では、フェイスリフトではスレッドの割合が増えており、眼瞼の手術や顔面の脂肪注入、脂肪吸引、女性の外陰形成が増加している。豊胸ではヒアルロン酸注入とインプラントの利用が減少し、脂肪注入が増加している傾向がみられる。腋臭症では手術が減少し、非手術が増加する明らかな傾向がみられる。

非外科治療では、ボトックスが増加し、ヒアルロン酸は飽和傾向が伺える。他の注入剤も散見される。脂肪痩身は飽和傾向、PRP やその他の再生医療は増加している。

あとがき

本年の実施数調査は、厚生労働省科学研究の有害事象後ろ向き調査と同時に行われた。今回の有害事象調査は、1,575 件が回収され、別途研究報告書として、厚生労働省から公表される予定である。本実施数調査は毎年2-3 月に後ろ向き調査として行う予定であり、年次を重ねることにより、より信頼性の高い統計および分析結果が得られるるとともに、時系列による傾向・嗜好の変化など、多くの情報が収集できると予想される。